オープンイノベーションに欠かせないアクセラレータープログラムとは?
2021.10.16
オープンイノベーション時代の流れや市場の移り変わりは激しさを増し、商材やサービスにおけるプロダクトライフサイクルの短期化が顕著になってきています。そのような中で、現在多くの企業が新たな事業の研究・開発を目指し、様々な取り組みを行っています。プロダクトライフサイクルの短期化の中で、常に消費者ニーズにあった商材やサービスを展開していくには、企業内のリソースが欠かせません。そこで、大手企業を中心に、革新的なアイディアや最新のテクノロジーを武器に事業展開を試みるスタートアップ企業やベンチャー企業を結ぶオープンイノベーションの考え方に注目が集まっています。このオープンイノベーションの導入を目指す多くの企業は、スタートアップ企業の事業化を支援する「アクセラレータープログラム」を活用・展開しています。アクセラレータープログラムは、いわばオープンイノベーションのトレンドワードにもなっています。ではアクセラレータープログラムとはいったいどういったものなのでしょうか?今回は、オープンイノベーションには欠かせない、アクセラレータープログラムについて概要や特徴などを紹介していきます。
目次
オープンイノベーションとアクセラレータープログラム
日本においても徐々に浸透してきているオープンイノベーションですが、このオープンイノベーションを展開していく上で、アクセラレータープログラムを実施する企業が増えてきています。アクセラレーター(Accelerator)とは、自動車でいうところのアクセル、加速させる、促進させるといった意味があります。つまり、オープンイノベーションを行う上で、大企業がスポンサーとなり、スタートアップ企業やベンチャー企業とともに共創していくことで、事業を加速化させ成功につなげる仕組みのことを指します。主に大企業が主催するコンテストのような場所で展開されることが多く、スタートアップ企業にとっても大企業から資金調達することができるため、事業をより加速化してブラッシュアップでき、成功につなげやすくなる特徴があります。
オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、2003年にハーバード大学のヘンリー・チェスブロウ教授によって提唱されました。プロダクトライフサイクルの短期化に応じて商材やサービスを展開していくためには、自社のリソース強化が欠かせません。そのために自社だけではなく、社外から新たなアイディアや技術、知識やノウハウなどを集め、それらをもとに革新的な商材やサービスを、スピード感を持って開発展開していくことを指します。常に消費者のニーズに合わせて商材やサービスを開発し続けなければならない昨今において、その開発をよりスムーズに展開しやすくなる手法として注目を集めています。
ヘンリー・チェスブロウ氏は、著書の中でオープンイノベーションのことを「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。」と定義しています。世界ではこのオープンイノベーションは主流となっていますが、日本では情報流出を怖れることなどから、まだまだ浸透しきれてはいません。ただ、グローバル化の動きだけでなく、政府も補助や制度改正など普及促進を図っていることもあり、徐々に日本でも注目度が高まってきています。
インキュベーターとの違い
アクセラレーターは、インキュベーターという言葉とよく混同されますが、この二つは似ている側面はあれど、目的の部分で大きく異なります。インキュベーター(incubator)とは、支援や育成を意味するインキュベートから派生した言葉になりますが、ビジネスにおけるインキュベーターは、起業したばかりのベンチャーやシード期以前のスタートアップ企業に対する支援を行う組織のことを指します。一方でアクセラレーターとは、単に支援するものではなく、先ほど紹介したように事業を加速化させる意味合いでの支援として活用しています。今回のオープンイノベーションの加速化を図るためには、やはりインキュベーターではなくアクセラレーターという形になります。
オープンイノベーションに欠かせないアクセラレータープログラムとは
ここまでアクセラレーターについて説明してきましたが、それではオープンイノベーションに欠かせないアクセラレータープログラムとは具体的にどういったものなのでしょうか?アクセラレータープログラムとは、一般的にスタートアップ企業やベンチャー企業などの新規事業を開発する部門に対して、大企業や自治体が資金調達といった形で支援することで、革新的な新規事業を共創・協業していくことを目指すプログラムとなります。革新的なアイディアや機能を有した事業に対し、スピード感を持って集中的に促進・拡大させ、市場に展開させるための手法として注目されています。オープンイノベーションにおけるアクセラレータープログラムは、大企業や自治体がビジネスプランの公募を行い、審査によって共創・協業企業が決まる流れが一般的になります。
アクセラレータープログラムが求められる理由とは
アクセラレータープログラムは、資金調達が受けられることから、スタートアップ企業やベンチャー企業にとっては非常に注目されていますが、大企業や自治体などのアクセラレーター側としても急速な世の中の変化に対して、消費者ニーズに合った商材やサービスといった価値を提供していく上で重要視されつつあります。大企業は、得てして経営リスクや既存事業とのバランスを重視するがあまり、新しい技術や・アイディア開発に対するチャレンジ精神につながりにくくなる傾向もあります。とはいえ、市場としては常に新しい商材やサービスが求められる背景もあり、社外の新しい技術やアイディア、知識やノウハウなどを取り入れてイノベーションを加速させる動きが活発化されてきています。そのような中で、スタートアップ企業やベンチャー企業のみならず、大企業や自治体においてもアクセラレータープログラムを導入する企業が増えてきました。
アクセラレータープログラムを活用するメリット
アクセラレータープログラムを活用するメリットとしては、先ほどもふれたようにスタートアップ企業やベンチャー企業のみならず、大企業や自治体においてもあります。
革新的なアイディアを世に広めるためには、研究開発を経て生まれた商材やサービスを市場にリリースしてマーケティングを行い、ビジネスとして拡大させる必要がありますが、それには莫大な費用はもちろん、消費者ニーズにマッチした付加価値を発信し市場に受け入られる状態へと導くノウハウも必要になります。スタートアップ企業やベンチャー企業にとって、この点は非常に大きなハードルとなりますが、大企業や自治体といったアクセラレーター=支援者が持つリソースや知識、技術、ノウハウを得ることで、アイディアを形にしてスピード感を持って世の中に送り出せるメリットがあります。これは、大企業や自治体においても同様で、アクセラレータープログラムを活用したオープンイノベーションを展開することで、自社の事業に多様性が生まれたり、既存事業の技術革新につながったりと、大企業にとっても未来を拓く力を高めていくことができます。このように、アクセラレータープログラムは、企業規模を問わず様々なメリットをもたらすとも言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本でも徐々に浸透しつつあるオープンイノベーションには、同時にアクセラレータープログラムを活用した展開も注目されています。プロダクトライフサイクルの短期化の中で、革新的なアイディアを世に広めるためには、アクセラレーターによる事業の加速化は欠かせません。スタートアップ企業やベンチャー企業も、大企業や自治体が実施する多くのアクセラレータープログラムに関心を集めています。これからオープンイノベーションの導入を検討しているのであれば、是非このアクセラレータープログラムにも注目していきましょう。