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オープンイノベーション機構の概略と各大学の事例

市場の移り変わりが激しくなる中、常に消費者ニーズにあわせ最新の商材やサービスを展開していく上で、オープンイノベーションという考え方に注目が集まっています。世界では主流となっているオープンイノベーションですが、日本ではまだまだ浸透しきれていないのが現状です。そのような中で、政府もオープンイノベーションを促す試みを行っています。今回は、オープンイノベーションの普及促進を図るために文部科学省を中心に行っているオープンイノベーション機構について、その概略や連携している各大学の事例とあわせて紹介していきます。

「オープンイノベーション機構の整備事業」とは?

日本におけるオープンイノベーションの普及促進を図るため、文部科学省を中心に各大学と連携した「オープンイノベーション機構の整備事業」と呼ばれる動きが2018年から始まりました。「オープンイノベーション機構」とは、大学が企業と「組織」対「組織」として連携し、本格的な産学官連携を図るために体制を強化する狙いがあります。産業界をはじめ、専門家などの経験豊富な人材を集め、大学内の組織や制度を強化しながら企業の事業戦略に携わり、大型の共同研究を行うことを目的としています。そのために大学内の体制を整備する上で、政府として支援する活動をオープンイノベーション機構の整備事業としています。

政府による本事業の背景とねらい

産業構造や世界的な経済の変化、技術革新などが進む中で、オープンイノベーションへの取り組みは世界的に見ると非常に進んできています。日本における普及という点ではまだまだこれからですが、このような背景にあって、オープンイノベーションの普及を促進させるために、大学の優れた人材や知識、技術、ノウハウなどに大きな期待が寄せられています。今後オープンイノベーションを普及促進していくためには、大学や国立研究開発法人、企業のトップが関連する産学官連携が欠かせません。とはいえ、日本における現状としては、大学の一研究者個人と企業との連携に留まり、共同開発や共同研究という観点ではまだまだオープンイノベーションを有効活用できているわけではありません。企業側からも、日本の大学は海外の大学に比べると、提案力や連携の柔軟性、財務・知財管理などにおけるマネジメント体制などが課題と指摘されています。このような中で、政府は2025年までに大学に対する企業の投資額を3倍(2014年度比)とするという高い目標を定めました。この目標を達成するために「オープンイノベーション機構の整備事業」というものは展開されるようになりました。

政府の目指すオープンイノベーション機構の機能

オープンイノベーション機構の整備事業の中では、政府は参画する大学に対し以下のような機能を持つよう促しています。
①企業側は、大学のプロフェッショナルな人材を「クリエイティブ・マネージャー」として登用して専門性を高め、「組織」対「組織」として共同研究をマネジメントすること。
②全学的な大学改革と連動し、知的財産権の取扱い、秘密保持、共同研究費用の在り方等の取り組みを各学内で展開すること。
③国内外の企業から複数の大型共同研究を獲得し、間接経費等を基盤として研究等に還元し、オープンイノベーションとしての好循環を創出すること。
このような機能を目指し、公募を行ったところ2018年に8つの大学がオープンイノベーション機構の整備に参画しています。

オープンイノベーション機構の整備事業における各大学の取り組み

続いて、オープンイノベーション機構の整備事業における2018年に参画した各大学の事例について紹介していきます。

東北大学

東北大学は、国内外のアカデミアやベンチャー企業と多様な共同研究やアライアンスを手掛けてきた経験を活かし魅力ある企画を提案し続け、20数社の企業とオープンイノベーションを展開しています。「ニューノーマル」への対応と「社会課題」の解決に向けて、大学を中心とした産学連携活動を通じて、革新的な新規事業やイノベーションの創出を行っています。第一弾としては、ポストコロナ時代を先導する「大学発ベンチャーエコシステム」の構築に着手しています。

山形大学

山形大学は、特に有機材料分野で世界的な研究者を数多く擁しており、主に機能性材料の研究開発に精力的に取り組んでいます。オープンイノベーションにおいては学術・技術,市場・事業,研究管理の各分野に精通したクリエイティブ・マネージャーを中心とするマネジメント体制で産学連携活動を推進しています。「チーム山形大学」としてワンストップでオープンイノベーションのソリューションを提供する拠点を構築し、事業視点での知的財産の活用、企業のオープン&クローズ戦略への対応等、企業からの相談をワンストップで解決しています。

東京大学

東京大学では、従来の技術局所型の産学共同研究の枠を超えて、事業や産業の全体最適化を志向したネットワーク型イノベーションをもとに、競争力あるエコシステムの創出を行っています。この実現においては、企業との技術のマッチングのみではなく、知的財産権戦略を含む事業化モデルを前提とした共同研究の組成を行っており、関連する専門人材によるバックアップ体制も有しています。また、企業との事業レベルの共同研究における情報セキュリティの強化にも努めています。

東京医科歯科大学

東京医科歯科大学では、企業経営、研究開発、企画・渉外、財務、営業等の経験を持つ多様な人材がクリエイティブマネージメントチームとして配置され、企業とのプロジェクトの創出から進捗管理までを一貫してサポートできる体制を構築しています。医薬、再生医療、ゲノム医療、医療機器、ヘルスケア全般」の5つの分野において、創薬を中心に幅広く多彩なプロジェクトの確立を目指しています。オープンイノベーション機構は学長直轄の体制で、攻めの姿勢による活動を心掛けています。

名古屋大学

名古屋大学では、大学内における基盤・要素技術の研究・開発や協調領域を中心とした産学連携活動の成果をもとに、オープンイノベーションを展開しています。業界での豊富な経験と高い専門性およびコミュニケーション能力を持つプロジェクトクリエイティブマネージャーやプロモーターおよびURAが、産業界と大学との対話を充実させ信頼関係を構築、価値ある提案や技術コンサルティング活動につなげています。

京都大学

京都大学では、「withコロナ・postコロナ」の先を睨み、果敢にイノベーション創発活動を推進しています。創的かつ先進的な知識や技術を踏み込んだ競争領域を中心としたテーマを深堀するとともに、子会社3社と効果的に連携を図り、「組織」対「組織」の産学連携を加速化し、企業と本学が一体となって推進する産学共同研究の高度なマネジメントを展開して、産学連携活動の推進を図っています。

慶応義塾大学

慶慶應義塾大学は、主に健康長寿社会の実現に向けたメディカル・ヘルスケア領域およびスマート社会領域におけるオープンイノベーションを展開しています。最先端の各研究分野への支援はもちろんのこと、文理融合、AIやIoTビッグデータ解析技術を活用したメディカル・ヘルスケア領域とスマート社会領域の融合等について、企業との構想の立案段階から関わっています。イノベーション推進本部として学内に組織を設立後、一年弱で複数の企業が会員になっています。

早稲田大学

早稲田大学では、オープンイノベーションの持続的成長を見据え、企業の事業パートナーとして特長ある社会実装拠点を構築しています。総合大学の強みを生かした文理融合型共同研究や、透明性のある共同研究費の定時、得られた間接的経費を財源に持続的なエコシステムの構築などを展開しています。また、産学連携新研究棟竣工に伴い「早稲田オープン・イノベーション・バレー構想」も推進しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
日本におけるオープンイノベーションへの取り組みは、政府も注力しており国全体で活性化に向けた動きが進んでいます。その1つとして今回紹介したオープンイノベーション機構の整備事業は、大学を企業と捉え、企業との「組織」対「組織」としての産学連携に向け大きな注目を集めています。2018年には8大学が参画した状況でしたが、政府も随時公募を募っています。企業の取り組みとあわせ、オープンイノベーションにおける大学としての動きについても参考にしてみるといいでしょう。

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