行政書士は国家資格であり、毎年4万人以上もの人が受検をする人気資格です。行政書士を目指す人がもっとも気になる給料ですが、いったいどのくらいなのでしょうか。行政書士の平均年収、仕事内容についてを詳しく解説します。
行政書士の給料・平均年収は?
行政書士の給料・平均年収は、国税庁や厚生労働省・日本行政書士会連合の調査によると、およそ600万円前後であると言われています。しかし、行政書士は、人により働き方が異なるため、高所得と低所得の給料の差が激しい職業でもあります。そのため、独立開業した行政書士の場合には、3,000万円以上もの年収を稼ぎ出す人がいる一方で、300万円程度しか稼ぐことができない人もいます。
また、行政書士の給料・平均年収である600万円という数字は、あくまでも平均の数字です。そのため、行政書士の給料・平均年収とは、実際には600万円以下の年収の人の方が多いのが現実です。なぜ行政書士の平均年収が高くなっているかというと、一部の高所得の行政書士の年収が、平均の給料や年収を押し挙げているという形になっているからです。このように、行政書士の給料に大きな差がある理由とは、行政書士として独立開業すると、自分が抱える顧客数によって所得が大きく異なってくることが原因です。
このようなことから、行政書士の給料・平均年収は600万円と言われているものの、その人の働くスタイルや顧客の数など、実力によって大きく金額が異なります。そのため、行政書士になったからといっても、実際に平均年収である600万円を得られるとは限らないので注意が必要です。
行政書士の給料は各都道府県によっても異なる
行政書士の給料・平均年収は、都道府県ごとによって異なります。行政書士の各都道府県の平均年収を年収ごとに並べると、もっとも高いのが東京都の840万円です。次に、大阪府の720万円、神奈川県と愛知県が660万円、宮城県・茨城県・栃木県・群馬県・千葉県・石川県・福井県・長野県・静岡県・三重県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・福岡県の1府18県が平均年収である600万円となっています。
行政書士の平均年収よりも、少ない給料である地域を年収ごとに並べると、岩手県が558万円、山形県が552万円、北海道・福島県・埼玉県・新潟県・富山県・山梨県・岐阜県・和歌山県・鳥取県・島根県・香川県・愛媛県・高知県・長崎県・熊本県・大分県・鹿児島県の1道16県が540万円、青森県が510万円、秋田県が492万円、もっとも少ない平均年収は佐賀県・宮崎県・沖縄県で480万円になります。
このようなことから、行政書士の給料・平均年収がもっとも高い東京都の840万円に対し、もっとも低い佐賀県・宮崎県・沖縄県では480万円となっており、その差には360万円もの開きがあります。ただし、地域により物価等の事情も異なるため、いちがいに数字の通りの金銭的な差があると判断することはできかねます。
行政書士の給料は案件によっても違う
行政書士は仕事の内容によっても、給料が異なります。行政書士は、さまざまな行政手続きのために必要な書類作成や申請などの代行をするため、業務内容や担当する職種によっても報酬に差があるのが特徴です。そのため、請ける案件の単価が高い行政書士の場合には、必然的に給料も高くなります。行政書士の業務内容は、おもに「法的効力を持つ書類に関する作成・手続き代理・作成に関する相談業務」です。
行政書士の業務でもっとも依頼が多い案件は、「営業許可申請書類作成」や「法人定款作成業務」で、許認可申請の相談から書類作成などのさまざまな業務を行います。また、行政書士の報酬額は、各行政書士が個々に自由に金額を設定することができます。そのため、同じ業務内容であっても、担当した行政書士により報酬額が異なることから、給料にも差がでることとなります。とはいえ、どの業界でも案件に対する相場があるため、大幅に報酬額が異なるということがほとんどないでしょう。
このようなことから、行政書士は請ける案件により給料や年収が変動します。行政書士の業務の中でとくに需要が多く高単価な案件は、「薬局開設許可」で特化して請け負う場合の平均年収は1480万円です。次に高単価な行政書士の業務案件は、「産業廃棄物処理業許可申請」で814万円、「知的資産経営報告書作成」が809万円、「帰化許可申請」が782万、「遺留分特例に基づく合意書の作成」が679万円で、平均年収以上の給料を得ることができます。
反対に、行政書士の給料・平均年収に満たない案件は、「事業継続計画書作成」が592万円、「学校法人設立認可申請」が582万円、「宗教法人設立」が548万円、「風俗営業許可申請」が445万円、「種苗法」が300万円、「遺言執行手続」が287万円、「社会福祉法人設立認可申請」が275万円、「一般乗合旅客自動車運送事業」が259万円、「特例民法法人から公益社団法人・財団法人への移行認定申請」が242万円、「一般社団法人・財団法人から公益社団法人・財団法人への移行認定申請」が208万円となっています。
このように、同じ行政書士の行う業務であっても、案件によってかなりの金額の差があります。そのため、行政書士になったとしても、扱う案件業務の単価が低いものばかりを請けてしまうと、平均年収どころか低所得となってしまうおそれもあります。
行政書士の給料は働き方によって違う
行政書士は、独立開業以外の働き方もあります。士業と兼業をする人や雇用される人、普段はサラリーマンで行政書士の資格を取得し、登録だけをしているという人もいます。このように、行政書士は働き方によっても、大きく給料や平均年収が異なります。この中でも、もっとも多くの給料や年収を得られる可能性があるのは、独立開業の行政書士です。しかし、行政書士としてすぐに独立開業をする人は少なく、ほとんどの場合は、行政書士事務所で経験を積んでから独立するパターンになります。
なぜなら、行政書士として高額な給料を得るためには、個人の営業力や実力が問われるため、経験が少ないうちに独立をしても顧客を掴むことができずに平均年収以下となってしまうおそれがあるからです。そのため、まずは行政書士としての実力を付けるとともに、営業力も積むために、行政書士事務所にて一定期間働いてから独立することが多いです。行政書士として成功すれば、年収1000万円の給料を得ることも夢ではありません。
行政書士以外の資格も取得し、2つの資格(ダブルライセンス)を使い、兼業で働くというパターンもあります。行政書士と兼業をする士業はいくつかありますが、中でも一番多いのが「税理士」との兼業です。なぜ税理士との兼業パターンが多いのかというと、税理士の資格を取得することにより、行政書士も無試験で登録をすることができるからです。そのため、税理士で700万円・行政書士で200万円の給料で、合計900万円の年収を得るといった稼ぎ方も可能になります。
行政書士として企業に雇用される場合には、務める会社により給料は異なるでしょう。また、企業に務める場合には、行政書士は雇用形態上定年退職があることも、きちんと把握しておく必要があります。もしも、定年制度に関係なく働きたいという場合には、後に独立開業をする以外に方法はありません。雇用の行政書士の給料・平均年収は、東京都で690万円、大阪府で580万円、全国平均は510万円になります。
また、属する企業の規模によっても、行政書士の給料・平均年収は異なります。大企業に雇用されている行政書士の場合には、給料・平均年収は700万円、中規模企業は410万円、小規模企業は360万円です。このように、行政書士として企業に雇用される場合には、大企業と小規模企業とでは340万円もの年収の差があります。そのため、行政書士として就職する場合には、雇用先の選定もとても重要であると言えるでしょう。
本業がサラリーマンで、行政書士の登録のみをしているだけというパターンの場合には、副業として行政書士を行うため、給料はあまり多くは望めないでしょう。副業で行政書士をしている人の給料・平均年収は、34万円〜120万円と仕事の量や案件などによりさまざまnです。また、このパターンの場合には、「課税対象にならない年額20万円以下」に行政書士の給料を設定している人も多いようです。
行政書士の給料を上げる方法
行政書士は、毎年多くの人が資格を取得し登録するものの、「登録行政書士の9割は5年以内に廃業」してしまうというのが現状です。そのため、行政書士はライバルも多い職業であることから、給料や年収を上げたいのであれば、「何かに特化する」もしくは「新しい顧客のニーズを開拓する」などの他とは違った特徴を持つ必要があるでしょう。
まとめ
行政書士は、毎年多くの人が資格取得をするライバルの多い職業の1つです。行政書士の給料・平均年収は600万円であると言われていますが、実際には一部の高所得者が平均を押し上げているだけで、多くは平均年収以下であるのが現状です。行政書士として高い給料・年収を得たいのであれば、独立開業もしくは他の士業と兼業するかのどちらかになります。行政書士は、税理士の資格を取得することにより、無試験で登録することが可能です。
そのため、税理士と行政書士を兼業することにより、高所得・給料を得る人も多くいます。しかし、行政書士で給料・平均年収を最大限に上げたいというのであれば、やはり独立開業をし、自分なりの強みや新しいニーズを開拓するなどの、他にはない特徴を持った行政書士を目指すことがもっとも良い方法であると言えるでしょう。